前田 詩穂
営業担当者や拠点ごとに、異なるExcelで作成される見積書。それぞれが業務に合わせて工夫を重ねてきた結果、形式がバラバラになり、過去の見積データも十分に活用できていない。こうした見積業務の属人化を改善するには、現場ごとに工夫してきたやり方をどう活かすかも考える必要があります。
そんな課題を抱える製造業のお客さまに、当社が提案したのは、Excelを統一するのではなく、今あるやり方を活かして見積データを集める仕組みでした。現場が積み重ねてきた工夫を尊重し、無理に運用を変えずに改善を進める方法を選んだのです。
そこから始まった取り組みは、見積データの集約・分析を経て、現在はAIを活用した自動見積の実現に向けた検討へと進んでいます。
小さな一歩から始まった見積改革。お客さまとともに改善を進めてきた、その過程を紹介します。
かつては、積極的に営業活動をしなくても案件が舞い込んできた。
今回ご紹介するのは、そんな業界内で先行的な地位を築いていた製造業のお客さまの事例です。ところが、業界内の競争が激しくなるにつれ、状況は変わってきました。見積の精度やスピードが、受注を左右する重要な要素になってきたのです。
そこで課題となったのが、見積業務の進め方でした。
当初は統一されたExcelで見積書を作成していましたが、工夫や改善を重ねるうちに、少しずつ形式が異なるようになっていました。その結果、過去の見積データは蓄積されていたものの、十分に活用できていませんでした。
こうした状況を背景に、当社に寄せられたのが「見積の精緻化・迅速化」という相談でした。
お客さまの経営者は新しい技術の活用にも積極的で、AIにも関心を持たれていました。ただ、当初から具体的な活用方法が決まっていたわけではありません。
まずは、個々の担当者が作成している見積をどう集め、活用できるようにするか。
そこが、今回の取り組みの出発点となりました。
データを集約・活用するためには、まず形式を統一する。業務のデジタル化やAI活用を進めるうえで、よく語られる考え方です。
しかし、今回当社が提案したのは、既存のExcelをそのまま活かす方法でした。
形式が異なる見積書にも、現場ごとの工夫が反映されています。形式が違うからといって、現場のやり方そのものが間違っているわけではありません。
これまでのやり方を否定するところから始めてしまえば、現場の協力を得ることも難しくなると考え、既存の異なる形式の見積データを取り込める仕組みを考えました。
その中心に据えたのが、当社の営業支援システム「e-coLLabo SFA」です。
担当SEが考えたのは、e-coLLabo SFAを見積データの「集合場所」として活用することでした。重視したのはSFAの導入そのものではなく、現場のやり方を活かしながら、見積データを無理なく集約できる仕組みと運用づくりでした。
営業担当者は、これまでどおりExcelで見積書を作成し、完成したファイルを指定のフォルダに移すだけ。現場のやり方を尊重するという考え方を、具体的な運用にも反映しました。
見積データを集める仕組みを、どのように形にしていくか。
今回の取り組みでは、最初から完成形を決めるのではなく、実際の画面や動きをお客さまに見てもらいながら、少しずつ具体化していきました。
最初に取り組んだのは、お客さまが使っていたAccess製の販売管理システムを参考にした画面づくりです。
最初は既存システムの画面レイアウトを再現したものでしたが、実際に画面を見ながら話を進めるうちに、お客さまから具体的な業務の話が次々と出てくるようになりました。
専門用語が使われている項目の意味や、どの項目をどの順番で入力するのか。画面を見ただけではわからなかった業務の流れが、少しずつ明らかになっていきました。
こうしたやり取りは、お客さまの業務への理解を深め、その後の検討を進めるうえでも役立ちました。
続いて、Excelで作成した見積データをWeb画面に表示できるようにしました。さらに、A版、B版など、形式の異なるExcelにも順次対応。現場ごとの違いを取り込み側で吸収できるよう、機能を拡張していきました。
こうして一つずつ仕組みが形になるたびに、お客さまとの議論も深まっていきました。
また、お客さまの営業会議に参加して仕組みを説明した際には、営業担当者からもさまざまな質問が寄せられました。
特に関心が高かったのは、自分たちが使い慣れたExcelの内容を、どこまで新しい仕組みに反映できるのかという点です。
サイズや材質、金額などの共通項目はデータベースに集約する一方、図面や個別の注記などは無理にデータベース化せず、Excelファイルそのものを添付して確認できるようにしました。
これまでの見積書に含まれていた情報を、そのまま確認できる。この仕組みは、営業担当者の安心感にもつながりました。
さらに、営業会議では、運賃表の最新情報を確認したいという要望も出てきました。重量のある製品を扱うため、運送費も見積金額を左右する重要な要素です。
担当SEは、当時の様子をこう振り返ります。
「大きなターニングポイントがあったわけではありません。ただ、実際に動くものを見てもらうたびに、関係者の姿勢が少しずつ前向きになっていくのを感じました」
見積データの集約から始まった話し合いは、日々の見積業務をさらに改善するためのアイデアへと広がっていきました。
取り組みが進むなかで、過去10年分の見積データを一括で取り込み、Excelのピボットテーブルを使って分析できる状態にしました。
現在は、AIを活用した自動見積の実現に向けて、標準規格の製品を対象に、お客さまのWebサイトから直接見積回答ができる仕組みを検討しています。
営業担当者を介さずに見積回答ができるようになれば、見積業務の迅速化にもつながります。
具体的には、AIを活用して合理的な価格表を継続的に整備し、その価格表をもとにWebサイトで見積金額を回答する方法を検討しています。
一方、発生頻度の低い特殊な見積については、すべてを自動化するのではなく、従来どおり人が対応する方針です。自動化する範囲を見極めながら、現実的な仕組みづくりを進めています。
また、コアメンバーを中心に見積データの蓄積を進めています。今後、こうして集めたデータをさらに活用し、見積業務の精度とスピードを高めていくことを目指しています。
今回の見積改革は、最初から完成形が見えていたわけではありません。
現場のやり方を尊重し、無理なく取り組めるところから始めました。そして、実際に動くものを見ながら、お客さまと一緒に次の改善を考えてきました。
そうした積み重ねが、当初は具体像のなかったAI活用への取り組みにつながっています。
今回の事例でも大切にしてきたのは、現場の実情を理解し、これまでの工夫や業務の進め方を尊重することです。
課題は感じているものの、何から手を付ければよいかわからない。自社に合った改善方法を見つけたい。
e-coLLaboソリューションでは、お客さまの業務や課題を丁寧に理解し、解決策の検討からシステム導入、その後の改善まで一緒に取り組みます。
具体的な解決策が決まっていない段階からでも、お気軽にご相談ください。
▶業務改善について相談する